Glossary 用語集

海底ケーブルの専門用語を日本語でわかりやすく解説

50 用語 4 カテゴリ
すべて インフラ技術運用ビジネス
運用

RFS

アールエフエス

Ready for Service の略。海底ケーブルが建設完了し、商用サービスの提供を開始できる状態になった日付。ケーブルプロジェクトでは計画発表から RFS まで通常 2〜4 年かかる。

運用

ROV

アールオーブイ

Remotely Operated Vehicle の略。遠隔操作で深海作業を行う無人潜水機。海底ケーブルの敷設時の海底調査や、ケーブル修理時の海底作業に使用される。水深数千 m での作業が可能。

ビジネス

IRU

アイアールユー

Indefeasible Right of Use の略。海底ケーブルの容量を長期間 (通常 15〜25 年) にわたって独占使用する権利。ケーブルの所有権は移転しないが、割り当てられた容量を排他的に利用できる。通信事業者間の容量取引の基本的な形態。

ビジネス

ICPC

アイシーピーシー

International Cable Protection Committee の略。海底ケーブルの保護を目的とする国際的な業界団体。1958 年設立。ケーブルオーナー、政府機関、学術機関などが参加し、ケーブル保護に関するベストプラクティスの策定、各国政府への助言、漁業者や海運業者への啓発活動を行う。

技術

EDFA

イーディーエフエー

Erbium-Doped Fiber Amplifier の略。エルビウムを添加した光ファイバーを使って光信号を直接増幅する装置。海底ケーブルの中継器の核心技術であり、電気変換なしに光のまま信号を増幅できるため、高速・大容量通信に不可欠。

技術

ウェットプラント

ウェットプラント

海底ケーブルシステムのうち、海中に設置される機器の総称。ケーブル本体、中継器、ブランチングユニットなどが含まれる。陸上機器であるドライプラント (SLTE、給電装置など) と対をなす概念。25 年間メンテナンスフリーで稼働する高信頼性が要求される。

ビジネス

ASN

エーエスエヌ

Alcatel Submarine Networks の略。フランスに拠点を置く世界三大海底ケーブルメーカーの一角。Nokia グループの一員。60 万 km 以上のケーブル敷設実績を持ち、欧州、アフリカ、アジア地域のプロジェクトに強みを持つ。ケーブル製造工場を仏カレーに有する。

技術

SLTE

エスエルティーイー

Submarine Line Terminal Equipment の略。ケーブルランディングステーションに設置され、海底ケーブルの光信号を陸上ネットワークのフォーマットに変換する終端装置。WDM の波長分割・多重化もここで行われる。

ビジネス

NEC

エヌイーシー

日本の総合電機メーカーであり、世界三大海底ケーブルメーカーの一角。海底ケーブルシステムの世界市場シェア約 35% を占め、SubCom、ASN と並ぶトップ企業。1969 年以降 30 万 km 以上のケーブルを敷設した実績を持ち、日本近海および太平洋地域のケーブルプロジェクトに強みを持つ。

技術

OTDR

オーティーディーアール

Optical Time Domain Reflectometer (光パルス試験器) の略。光ファイバーにパルス光を入射し、反射光の強度と時間を測定することで障害点の位置と種類を特定する計測器。海底ケーブルの障害点探知において最も基本的かつ重要な測定機器であり、km 単位の精度で故障箇所を特定できる。

ビジネス

オープンケーブル

オープンケーブル

ウェットプラント (海中設備) とドライプラント (陸上設備) の所有・運用を分離する新しいビジネスモデル。ケーブルオーナーがウェットプラントを建設・所有し、容量購入者が自前のドライプラントを接続することで、設備の柔軟な選択と段階的な容量拡張が可能になる。Google の Firmina などが代表例。

インフラ

海底ケーブル

かいていケーブル

海底に敷設される通信用の光ファイバーケーブル。世界の国際データ通信の 99% 以上を担っており、大陸間のインターネット接続を支える重要なインフラ。深海部では直径約 17mm と細いが、浅海部では鎧装により太くなる。設計寿命は通常 25 年。

技術

給電装置

きゅうでんそうち

陸上のケーブルランディングステーションから海底の中継器に電力を供給する装置。PFE と略される。高電圧の直流電流をケーブルの導体を通じて送電する。長距離ケーブルでは数千ボルトの電圧が使われる。

技術

空間分割多重 (SDM)

くうかんぶんかつたじゅう

Space Division Multiplexing の略。従来のファイバー 1 本に 1 つのコアを使用する方式に対し、マルチコアファイバー (1 本に複数のコア) やマルチモードファイバーを使って伝送容量を増大させる次世代技術。実用化に向けて研究が進められている。

運用

ケーブル修理

ケーブルしゅうり

故障した海底ケーブルを修復する作業。ケーブル敷設船が故障箇所に向かい、海底からケーブルを引き揚げて損傷部分を切断・接続し直す。深海では ROV (遠隔操作無人探査機) を使用。修理には数日から数週間かかり、費用は数千万円規模。

インフラ

ケーブル設計寿命

ケーブルせっけいじゅみょう

海底ケーブルシステムが設計上稼働可能とされる期間で、通常 25 年。中継器の信頼性、光ファイバーの劣化、給電系の寿命などを考慮して定められる。近年は技術更新の速さから実際の運用期間は設計寿命より短くなる傾向にあり、退役後のケーブルを科学観測用に転用する事例も増えている。

運用

ケーブルデポ

ケーブルデポ

海底ケーブルの修理用予備ケーブルやジョイント機材を保管する陸上の備蓄施設。世界各地の戦略的な港湾に設置されており、障害発生時にケーブル敷設船が迅速に資材を積載して出港できるようにしている。修理までの時間短縮に不可欠な拠点。

運用

ケーブル敷設船

ケーブルふせつせん

海底ケーブルの敷設・修理を行う専用船。巨大なケーブルタンクを船内に持ち、数千 km のケーブルを搭載して航行する。NTT ワールドエンジニアリングマリンの「すばる」、SubCom の「Reliance」などが有名。修理時には海底からケーブルを引き揚げて修復する。

インフラ

ケーブル防護

ケーブルぼうご

海底ケーブルを物理的損傷から守るための措置の総称。浅海域では鎧装 (アーマー) や埋設、コンクリートマットの敷設、ケーブル保護区域の設定などが行われる。深海部ではケーブル自体が細く軽量な非鎧装タイプとなる。

運用

ケーブル保護区域

ケーブルほごくいき

海底ケーブルの敷設ルート周辺に設定される、錨泊や底引き網漁業などが制限される区域。国際法 (国連海洋法条約) によりケーブル損傷は犯罪とされており、各国が保護区域を設定して管理している。

運用

ケーブル保守協定

ケーブルほしゅきょうてい

Cable Maintenance Agreement (CMA) の略。同一海域に海底ケーブルを持つ複数の事業者が、ケーブル敷設船や修理資材を共同利用するために締結する協定。障害発生時に最寄りの修理船を迅速に手配でき、修理コストと時間を大幅に削減できる。

インフラ

ケーブルランディングステーション

ケーブルランディングステーション

陸揚げ地点に設置される施設で、海底ケーブルの終端装置や電力供給装置を収容する。CLS と略される。海底ケーブルと陸上バックボーンネットワークの接続点であり、通常は厳重なセキュリティで管理される。

運用

ケーブルルートチャート

ケーブルルートチャート

海底ケーブルの敷設ルートを示した海図。船舶が投錨やトロール漁業などでケーブルを損傷しないよう、ケーブルの位置情報を海事関係者に提供する。各国の水路当局が発行し、航海用海図にもケーブルルートが記載される。

ビジネス

国連海洋法条約

こくれんかいようほうじょうやく

United Nations Convention on the Law of the Sea の略。1982 年採択、1994 年発効。海底ケーブルの敷設・保護に関する国際法的枠組みを規定する。全ての国が公海に海底ケーブルを敷設する自由を持つこと、ケーブル損傷が国際法上の違法行為であることなどを定めている。

技術

コヒーレント伝送

コヒーレントでんそう

光の振幅と位相の両方を変調して情報を載せる現代の光伝送技術。従来の強度変調方式と比べて周波数利用効率が大幅に向上し、1 波長あたりの伝送容量を飛躍的に増大できる。16QAM や 64QAM などの多値変調方式とデジタル信号処理 (DSP) を組み合わせ、海底ケーブルの大容量化を実現している。

ビジネス

コンソーシアム

コンソーシアム

海底ケーブルを共同で建設・所有・運営する複数の通信事業者の共同体。巨額の建設費 (数百〜数千億円) を分担し、各メンバーは出資比率に応じた容量を使用する権利を得る。近年は Google, Meta などの IT 企業も参加。

ビジネス

SubCom

サブコム

米国に拠点を置く世界三大海底ケーブルメーカーの一角。旧 Tyco Electronics Subsea Communications。ケーブル製造から敷設船運用、保守まで垂直統合したサービスを提供。大型ケーブル敷設船「Reliance」を保有し、世界中で大規模な海底ケーブルプロジェクトを手がける。

ビジネス

C&MA

シーアンドエムエー

Construction & Maintenance Agreement の略。コンソーシアム方式の海底ケーブルにおいて、建設と保守に関する権利義務を定める基本契約。各メンバーの出資比率、容量割当、保守費用の分担、意思決定プロセスなどを規定する。ケーブルの運営期間全体 (通常 25 年) にわたって効力を持つ重要な法的文書。

インフラ

ショアエンド

ショアエンド

海底ケーブルの陸揚げ地点付近の浅海部分。水深が浅く漁業活動や波浪の影響を受けやすいため、二重鎧装 (ダブルアーマー) など特に厚い防護が施される。ビーチマンホールから水深約 1,000m 付近までの区間を指し、ケーブル全体の中で最も損傷リスクが高い。

運用

障害点探知

しょうがいてんたんち

海底ケーブルに故障が発生した際に、損傷箇所を特定する技術。OTDR (光パルス試験器) を使用して光の反射パターンを分析し、障害点までの距離を精密に測定する。迅速な修理のために不可欠な技術。

技術

スパン長

スパンちょう

海底ケーブルにおいて隣接する中継器 (リピーター) 間の距離。通常 60〜100km に設定される。スパン長が短いほど光信号の品質は良くなるが、中継器の数が増えてコストが上昇する。ケーブルの伝送容量や距離に応じた最適設計が行われる。

技術

設計容量

せっけいようりょう

海底ケーブルが最大限の装置を搭載した場合に達成できる理論上の最大通信容量。Tbps (テラビット毎秒) で表される。実際の稼働容量 (lit capacity) は設計容量の一部で、需要に応じて段階的に拡張される。

技術

ダークファイバー

ダークファイバー

設置済みだがまだ光信号を通していない (暗い) 光ファイバー。海底ケーブルでは将来の需要増に備えて余剰のファイバーペアを搭載することがあり、これらがダークファイバーとなる。必要に応じて「ライトアップ」(稼働開始) される。

技術

中継器

ちゅうけいき

海底ケーブルに一定間隔 (通常 60〜100km) で設置される光信号の増幅装置。EDFA (エルビウムドープ光ファイバー増幅器) を使用し、減衰した光信号を増幅する。海底で 25 年間無故障で稼働することが要求される高信頼性機器。

インフラ

TPC

ティーピーシー

Trans-Pacific Cable の略。日米間を結ぶ海底ケーブルシリーズ (TPC-1 〜 TPC-5) の総称。1964 年に TPC-1 が開通し、日本初の太平洋横断電話ケーブルとなった。1989 年開通の TPC-3 は世界初の大洋横断光ファイバー海底ケーブルとして通信史に名を刻んでいる。

ビジネス

TeleGeography

テレジオグラフィ

海底ケーブル業界の調査・分析を行う米国の調査会社。世界中の海底ケーブルの情報を網羅した「Submarine Cable Map」を公開しており、業界のデファクトスタンダードなデータソース。帯域市場や通信事業者の分析レポートも提供。

技術

ドライプラント

ドライプラント

ケーブルランディングステーションに設置される陸上機器の総称。SLTE (海底回線終端装置)、PFE (給電装置)、ネットワーク管理システムなどが含まれる。海中機器であるウェットプラントと対をなす概念で、容量拡張や技術更新が比較的容易。

ビジネス

ハイパースケーラー

ハイパースケーラー

大規模なクラウドサービスを提供する巨大 IT 企業の総称。Google, Microsoft, Meta, Amazon (AWS) などが代表的。近年はこれらの企業が自社専用の海底ケーブルを建設するケースが急増しており、海底ケーブル業界の勢力図を変えつつある。

技術

波長分割多重 (WDM)

はちょうぶんかつたじゅう

1 本の光ファイバーに異なる波長の光信号を同時に伝送する技術。これにより、ファイバー 1 本あたりの通信容量を飛躍的に増大できる。最新の DWDM (高密度 WDM) では 100 以上のチャネルを 1 本のファイバーで伝送可能。

インフラ

ビーチマンホール

ビーチマンホール

海底ケーブルが海岸から陸上へ上がる地点に設置されるマンホール。海底ケーブルと陸上ケーブルの接続点であり、BMH と略される。通常は海岸の砂浜下に埋設されている。

技術

光ファイバー

ひかりファイバー

ガラスやプラスチックの極細の繊維で、光信号を伝送する媒体。海底ケーブルの心臓部であり、1 本のファイバーで数十 Tbps の伝送が可能。ファイバーペアとして送受信 2 本一組で使用される。

技術

ファイバーペア

ファイバーペア

光ファイバーの送信用・受信用の 2 本を一組にしたもの。海底ケーブルの通信容量は「ファイバーペア数 x 1 ペアあたりの容量」で決まる。最新のケーブルでは 16〜24 ファイバーペアを搭載するものもある。

ビジネス

プライベートケーブル

プライベートケーブル

単独の企業が建設・所有する海底ケーブル。従来のコンソーシアム方式に対し、Google や Meta などの巨大 IT 企業が自社のデータセンター間を直結するために建設するケースが増加。需要の急増に迅速に対応できる利点がある。

運用

プラウ埋設

プラウまいせつ

ケーブル敷設船が曳航する海底プラウ (鋤) を用いて海底ケーブルを海底土壌中に埋設する工法。浅海域でのケーブル保護の主要な方法で、ウォータージェット式や機械式がある。通常 1〜3m の深さに埋設し、漁具や投錨によるケーブル損傷を防止する。

技術

ブランチングユニット

ブランチングユニット

海底ケーブルの分岐点に設置される装置。1 本の海底ケーブルから支線を分岐させ、途中の島や国への接続を可能にする。BU と略される。遠隔操作で分岐先の切り替えが可能なものもある。

インフラ

埋設深度

まいせつしんど

海底ケーブルを海底面から埋設する深さ。浅海域では漁業活動や錨による損傷を防ぐため 1〜3m の深さに埋設される。深海部ではケーブルを海底に直接布設する (表面布設)。

インフラ

陸揚げ地点

りくあげちてん

海底ケーブルが海底から陸上に引き上げられる地点。ケーブルランディングステーション (CLS) と呼ばれる施設があり、海底ケーブルと陸上ネットワークを接続する。日本では千倉、志摩、北茨城などが主要拠点。

運用

ルートサーベイ

ルートサーベイ

ケーブル敷設前に行う海底地形の調査。地質調査船を使い、海底の地形・地質・障害物・既存ケーブルの位置を詳細にマッピングする。この結果をもとに最適なケーブルルートが決定される。

技術

レイテンシ

レイテンシ

データが送信元から宛先に到達するまでの遅延時間。海底ケーブルでは光がファイバー内を伝搬する時間で決まり、距離にほぼ比例する。東京-ロサンゼルス間で約 50ms。低レイテンシは金融取引やゲームなどで特に重要。

技術

ROADM

ロードム

ROADM(ロードム)とは Reconfigurable Optical Add-Drop Multiplexer の略で、光ネットワークにおいて特定の波長の光信号を柔軟に追加 (Add) ・分岐 (Drop) できる光デバイスのこと。海底ケーブルのブランチングユニットに搭載されることが多く、分岐点での波長ルーティングを遠隔操作で動的に変更できるため、帯域の効率的な利用が可能になる。通信事業者はROADMを使うことで、物理的な工事なしに帯域の再配分を行える。