海底ケーブルで米中摩擦、チリ閣僚のビザ取り消し

海底ケーブルで米中摩擦、チリ閣僚のビザ取り消し

まず読む基礎解説

2026年2月21日、米国務省がチリの閣僚1名を含む当局者計3名のビザを取り消した。理由は「地域の安全保障を損なう活動」への関与――その実体は、中国企業が計画する香港〜チリ間の海底光ファイバーケーブルプロジェクトだった。ビザ取り消しという外交的強硬手段が、一本の海底ケーブル計画に発動されたのは異例の事態だ。 ## 中国企業の香港〜チリ間ケーブルに米国が拒否反応 チリのアルベルト・ファン・クラフェレン外相は、米国の懸念が「中国企業による香港〜チリ間の海底ケーブル計画」にあると認めた上で、「米国政府はこのケーブルが安全保障上の脅威になり得ると考えている」と述べた。計画はまだ初期段階にあり、最終決定は下されていないという。 海底ケーブルは国際通信トラフィックの約99%を担うとされるインフラだ。特定の通信経路を中国企業が運営することでデータ傍受・通信遮断のリスクが生じるという米国の主張は一貫している。2020年代に入り、FCCは中国系企業が関与する複数の海底ケーブルの米国接続を認可しない方針を打ち出してきた。今回の香港〜チリ間プロジェクトはその延長線上にある。 ## 南米が「技術覇権争いの新戦場」になる構図 南米は欧米・中国の双方がインフラ投資を競う地域であり、通信回線の主導権争いは太平洋を越えて広がっている。チリのケースが示すのは、「どの国の資本・技術でケーブルを敷設するか」という選択が、外交的制裁に直結する時代の到来だ。 単なる通信事業の話ではない。海底ケーブルの経路と事業者の選択は、安全保障・外交・規制・資金調達が絡み合う政治的交渉へと変貌しつつある。 ## スペイン・カナリア諸島では328kmの地域ケーブルを整備 こうした地政学的緊張とは別の次元で、地域内のデジタルインフラ整備を着実に進める動きもある。 テネリフェ島の公営企業Canalinkは2026年2月18日、エル・イエロ島への海底光ファイバーケーブル敷設計画を発表した。「Base 6」と呼ばれるこのプロジェクトはEUの資金支援を受け、カナリア諸島西部の島々を相互接続する約328kmのケーブルを敷設する。目的は冗長性の向上、単一事業者依存の解消、そして通信の回復力強化だ。 人口約1万1000人のエル・イエロ島のような小島では、唯一の海底ケーブルが損傷すれば島全体が通信孤立状態に陥りかねない。EU資金による複線化は、地域格差を埋めるデジタルインフラ政策でもある。 ## 「どこを通るか」が通信の命運を左右する チリとカナリア諸島の2事例は、海底ケーブルを巡る二つの現実を映し出している。 一つは、大国の安全保障戦略が第三国のインフラ選択に直接干渉するという現実。もう一つは、地域社会のデジタル化と経済発展を支えるための粛々としたケーブル整備だ。同じインフラをめぐっても、文脈によってその性格は大きく異なる。 世界の海底ケーブル総延長は約130万kmに達し、今なお各地で敷設プロジェクトが続いている。その経路一本一本が、地政学的な力学と地域の生活インフラを同時に担う存在となっている。

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出典

  • SubTel Forum: 米国政府は、チリと中国を結ぶ可能性のある海底ケーブル計画など、同国の中国との貿易関係をめぐる外交的叱責の一環として、チリの閣僚1名と他2名の当局者の入国を禁止している。
  • SubTel Forum: (Canalinkの計画の)目標は、システムの冗長性を高め、単一事業者への依存を減らし、通信の回復力を向上させることである。
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