SMW5復旧、3600km新設で進化するアジア通信網

SMW5復旧、3600km新設で進化するアジア通信網

2026年7月3日、パキスタン通信庁は国内のインターネットサービスが正常化したと発表しました。これは、障害が発生していた国際海底ケーブルシステム「SEA-ME-WE 5(SMW5)」の修復が完了したためです。国際データ通信の実に99%を担う海底ケーブルは、その切断が広範囲の通信に影響を及ぼし、まさに通信の生命線。その重要性と、日々進化する最新の海底ケーブル事情を、複数の新規プロジェクトや国際的な規制動向から掘り下げます。

アジアの通信基盤を強化する新海底ケーブルの波

アジア地域では、データ通信量の爆発的な増加に対応すべく、新たな海底ケーブル網の構築が活発化しています。その一つが、NECが主要企業群と供給契約を締結した「India-Southeast Asia(I-2SEA)」システムです。この海底光ケーブルシステムは、約3,600kmにわたりインド、マレーシア、シンガポールを結び、2029年の運用開始を予定しています。特に、インド国内の急成長するAIおよびハイパースケーラーデータセンターが集中するハイデラバードやチェンナイと、アジアのクラウドおよびAIハブであるシンガポール、そしてマレーシアのデータセンター拠点であるクアラルンプールを直接接続する重要な役割を担います。Microsoftなど世界的なIT企業もこのプロジェクトに参画し、来るべきAI時代に向けたインフラ投資を加速させているのです。

また、インドネシアのMoraRepublicと中国のHMN Techは、シンガポールとバタム島を結ぶ「Moratelindo International Cable System-3(MIC-3)」のWet Plant(海底設備)の工場受入試験を完了させました。MIC-3では、2つの32FP分岐ユニットを配備し、それぞれが16FP光スイッチ技術を搭載しています。HMN Techによれば、この光スイッチング技術により、幹線と分岐区間の間で柔軟かつ正確なスイッチングが可能となり、将来的な帯域幅の増加要求にも対応できる高いスケーラビリティを実現しています。これは、ジャカルタなどへの更なる拡張性をも見据えた設計です。

インターネットの生命線「海底ケーブル」切断時の影響と復旧

パキスタンで発生したSMW5ケーブルの障害は、国際通信網の脆弱性を改めて浮き彫りにしました。この障害により、パキスタン国内のインターネットサービスは一時的に混乱を来しましたが、パキスタン通信庁(PTA)は迅速に復旧作業を進め、同時に代替の国際回線を通じてインターネットトラフィックを迂回させることで、利用者への影響を最小限に抑える対策を講じました。通信事業者は、予期せぬ障害に備え、複数のルートを確保することで通信の途絶を防ぐ「レジリエンス(回復力)」の強化に日夜取り組んでいます。SMW5の復旧は、このレジリエンスが実際に機能した成功事例とも言えるでしょう。

国際規制が求める陸揚げライセンスの複雑な要件

海底ケーブルの建設だけでなく、その運用には各国政府の厳格な許認可が必要です。米国連邦通信委員会(FCC)は最近、海底ケーブル陸揚げライセンス申請の受理を発表し、本格的な規制審査プロセスを開始しました。この審査は、単に技術的な側面だけでなく、国家安全保障や外交政策といった多岐にわたる観点から、米国務省をはじめとする行政府機関との緊密な調整を伴うものです。通常、申請受領後14日間のコメント期間が設けられ、その後90日以内にFCCが最終的な決定を下すことを目指します。これは、国際的な情報流通の要である海底ケーブルが、各国の主権や安全保障に直結するインフラとして、極めて慎重に扱われている現実を示しています。

AI・クラウド需要が牽引する海底ケーブル技術の進化

現代社会を支えるAIやクラウドコンピューティングは、膨大なデータ通信量を必要とし、それが海底ケーブルへの投資を加速させています。高速・大容量化への要求は止まらず、光ファイバー技術は常に進化を遂げてきました。今回紹介したMIC-3で見られる光スイッチング技術や分岐ユニットは、従来の直線的な通信路に加え、より柔軟で複雑なネットワーク構築を可能にします。これにより、特定の地域へのデータ集中や将来的な帯域幅の増減にも動的に対応できるのです。また、AI処理に必要な大量のデータを迅速かつ安定的に送受信するため、低遅延性も重要な要素となります。これらの技術革新は、デジタルエコノミーの発展に不可欠な通信インフラを、より強固で持続可能なものへと進化させ続けています。

急速に進化するデジタル社会において、海底ケーブルは単なる物理的な接続を超え、情報と経済を循環させる動脈としての役割を一層強化しています。特にアジア地域では、AIやデータセンターの急速な発展が新たな通信需要を生み出し、次世代の海底ケーブル建設を牽引していくでしょう。私たちは、この目に見えない巨大なインフラがもたらす恩恵を享受しながら、その未来を見守る必要があります。

この記事は信頼性の高い業界情報源に基づき作成し、編集部が内容を確認・監修しています。お気づきの点はお問い合わせよりお知らせください。

よくある質問

海底ケーブルが切れるとどうなりますか?
海底ケーブルが切断されると、該当ルートを利用する広範囲のインターネットサービスに影響が生じ、通信速度の低下や接続障害が発生します。パキスタンではSMW5ケーブルの障害で一時的にインターネットが混乱しましたが、代替ルートへの切り替えで影響を最小限に抑えられました。
新しい海底ケーブルはなぜ次々と建設されるのですか?
AIやクラウドコンピューティングの普及により、世界中でデータ通信量が爆発的に増加しているためです。既存のケーブルだけでは処理しきれない膨大なデータを安定して送受信するため、大容量かつ低遅延な新ケーブルの建設が不可欠となっています。
海底ケーブルの敷設や運用にはどのような許可が必要ですか?
海底ケーブルの敷設や運用には、関係する各国政府の厳格な許認可が必要です。特に陸揚げ地点でのライセンスは重要で、米国FCCの例のように、国家安全保障や外交政策の観点からも詳細な審査が行われます。

出典

    海底ケーブル通信インフラ国際通信AIデータセンターSMW5I-2SEAMIC-3