世界の通信99%を運ぶ海底ケーブルの仕組み

世界の通信99%を運ぶ海底ケーブルの仕組み

基礎から押さえる

直径わずか17mm——庭のホースより細いこのケーブルが、世界のインターネットトラフィックの99%以上を運んでいる。動画ストリーミング、国際電話、金融取引——私たちが海外とやりとりするデジタルデータのほぼすべては、海の底に敷かれた光ファイバーケーブルを経由する。 衛星通信が普及した現代でも、大容量かつ低遅延の国際通信を支えるのは海底ケーブルだ。現在、世界の海底には約500本、総延長140万km以上のケーブルが張り巡らされている。地球を35周できる距離である。 ## 直径17mmの断面に詰め込まれた4層構造 現代の海底ケーブルを輪切りにすると、中心から外側へ4つの層が現れる。 最も内側には光ファイバーが束ねられている。1本のケーブルに4〜24ペアの光ファイバーが収容されており、それぞれのペアが独立した通信経路として機能する。その周囲を銅管が覆い、光ファイバーを機械的に保護しながら、中継器への給電導体としても働く構造だ。 次の層はポリカーボネートだ。電気的な絶縁と、深海の水圧に耐えるための保護を担う。深海部ではここまでで直径約17mm、重量は1mあたり約1.4kg。軽量化によって敷設コストと作業負荷を下げる設計になっている。 浅海部(水深1,500m以下)では、さらに外側に鋼線アーマーが巻かれる。漁船のアンカーや底引き網から物理的に守るためだ。アーマー付きケーブルの直径は約50mm、重量は1mあたり約10kgにまで膨らむ。最外層はポリエチレン製の外被で、防水と耐久性を確保する。同じケーブルでも水深によって構造がまったく異なる——これは意外と知られていない事実だ。 ## 太平洋を数ヶ月かけて敷設——ケーブル船の仕事 海底ケーブルを敷設するのは専用のケーブル敷設船だ。船体中央の巨大なケーブルタンクに数千km分のケーブルをコイル状に積み込み、船尾から繰り出しながらゆっくりと航行する。1日あたりの敷設量は約100〜150km。太平洋横断ケーブルの敷設には数ヶ月を要する。 浅海部では、ケーブルを海底に1〜3m埋設して漁業活動から保護する。水深1,000mを超える深海では、外敵となる生物も漁具も届かないため、海底面にそのまま敷設する。航路上の海底地形を事前に精密調査し、断層帯や海山を避けながら最適なルートを選ぶ作業もこの船が担う。 ## 光を増幅し続ける中継器、25年間メンテナンスフリーの設計 光信号は伝搬距離が伸びるにつれて減衰する。太平洋を横断するような長距離では、途中で信号を増幅しなければ届かない。そこで約60〜100kmごとに「中継器(リピーター)」が設置される。 中継器の心臓部はEDFA(エルビウム添加ファイバー増幅器)だ。弱まった光信号を電気に変換せず、光のまま増幅する。電気変換を省くことで処理遅延をほぼゼロに抑え、超高速伝送を可能にしている。 太平洋横断ケーブル1本には100台以上の中継器が並ぶ。すべて深海に沈んだ状態で、陸揚げ局から銅管を通じた直流電流で給電される。設計寿命は25年。一度海底に沈めれば、四半世紀にわたってメンテナンスなしで動作し続ける前提で作られている。修理が必要になった場合は専用船が現場まで航行してケーブルを引き上げる必要があり、費用は数億円規模になることもある。 ## 1858年の電信から140万kmのネットワークへ 海底通信の歴史は1858年に始まる。大西洋横断電信ケーブルが初めて敷設され、ヴィクトリア女王とブキャナン大統領がメッセージを交換した。しかし信号品質の問題から、このケーブルはわずか3週間で機能を失う。それでもこの失敗が、海底ケーブル技術の本格的な発展を促した。 光ファイバーへの移行が始まったのは1988年。大西洋横断の光ファイバーケーブル「TAT-8」が開通し、銅線ケーブルの時代に終止符を打った。以後、ケーブル1本あたりの伝送容量は指数関数的に拡大し、2020年代には数百テラビット毎秒(Tbps)の伝送が実現している。現在の世界海底ケーブル網は約500本・総延長140万kmに達する。 ## 衛星があっても海底ケーブルが不可欠な理由 「衛星通信が普及したなら、海底ケーブルは不要ではないか」——この問いへの答えは明確だ。容量と遅延の差が埋まらないからだ。 低軌道衛星でも通信遅延は数十ミリ秒単位で発生する。海底光ファイバーは光速に近い速度で信号を伝送でき、遅延を最小に抑えられる。金融取引や動画会議では、ミリ秒単位の差が実用上の限界を左右する。 容量の差も大きい。衛星通信は多数のユーザーが帯域を共有するが、海底ケーブル1本で数百Tbpsを安定供給できる。GoogleやMetaなどのテクノロジー企業が自社でケーブルを出資・建設するケースが増えているのも、そのためだ。データ通信量が増えれば増えるほど、直径17mmの光ファイバーへの需要は高まり続ける。

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出典

海底ケーブル光ファイバー通信インフラインターネット海底通信