海底ケーブルを衛星で代替できない3つの根拠
検索向け要約: 海底ケーブルはなぜ必要?衛星通信では代替できない3つの理由
結論
海底ケーブルが必要な理由は、容量、安定した低遅延、ビット単価の3点で衛星通信を大きく上回るからです。衛星は代替ではなく補完です。
- 最新海底ケーブル1本でも衛星網全体級の容量を持つことがある
- 大陸間通信では安定した遅延が金融・クラウドに不可欠
- 大容量を長期に流せるため、コスト効率が衛星より圧倒的に高い
基礎から押さえる
世界のインターネットトラフィックの99%以上は、衛星ではなく海の底を走るケーブルが運んでいる。2024年に開通した日米間の「JUNO」は設計容量350テラビット毎秒(Tbps)——Starlinkが2025年時点で約6,000基の衛星を運用しても、その全帯域はせいぜい80〜120Tbps程度だ。ケーブル1本で衛星群全体の3倍近い通信を裁く。
SpaceXが低軌道衛星を急速に展開するなかで、「もう海底ケーブルは要らないのでは?」という声が聞こえてくる。結論から言えば、その発想は数字の現実と大きくかけ離れている。容量、遅延の安定性、コストの3つを具体的な数値で見れば、その理由は明快だ。
## ケーブル1本でStarlink全体の3倍——容量の絶対差
現在、世界では500本以上の海底ケーブルが稼働しており、総容量は約3,800Tbps。Starlinkの全衛星帯域(80〜120Tbps)と比べると、30倍以上の差がある。
この差が生まれる根本原因は、使う媒体の性質にある。海底ケーブルは光ファイバーの中を光が伝わるのに対し、衛星通信は大気圏を通る電波を使う。電波は光ファイバーと比べて、同じ周波数帯でも単位時間あたりに乗せられる情報量が根本的に少ない。KuバンドやKaバンドに対応したアンテナで周波数の上限まで絞り出しても、光ファイバーの伝送容量には遠く及ばない。
海底ケーブル側は技術革新が続いている。マルチコアファイバーや空間分割多重(SDM)技術は、1本のケーブルに複数の独立した光路を束ねることで容量を一気に引き上げる。実験室レベルでは光ファイバー1本あたり毎秒200テラビットを超える伝送速度が報告されており、今後も容量差は拡大する一方だ。
## 1ミリ秒の遅延差が年間数億ドルを左右する
光ファイバー内を進む光の速度は秒速約20万km、真空中の約3分の2だ。東京からロサンゼルスまで、太平洋横断でわずか60msで届く。
通信方式ごとに遅延を並べると、差は一目瞭然だ。海底ケーブルによる太平洋横断は約60ms、Starlinkの低軌道衛星(高度550km)は短距離なら20〜40msを実現するが、大陸間通信では複数の衛星を経由するため100msを超えることが多い。かつての静止軌道衛星(高度36,000km)は500ms以上かかっていたため、Starlinkの進化は確かに大きい。
しかし金融インフラにとって問題なのは、遅延の「大きさ」だけでなく「不安定さ」だ。海底ケーブルの遅延はほぼ固定で予測できる。衛星通信は豪雨で100msを超えたり、衛星の軌道位置やネットワーク混雑で変動したりする。高頻度取引(HFT)の世界では1ミリ秒の遅延差が年間数億ドルの利益差を生む。この分野で衛星通信が選ばれることは、当面ない。
## 建設費750億円でも「割安」——1GBあたりのコスト計算
1本あたり3〜5億ドル(450〜750億円)という建設費は確かに巨大だ。しかし25年間の運用期間で伝送できるデータ量を考えると、評価が逆転する。
350TbpsのJUNOが25年間フル稼働した場合、伝送できるデータ量は概算で約2,750億GBに達する。割り算の結果、1GBあたりのコストは衛星通信の数百分の1以下になる。Netflixの4K映画1本(約7GB)を太平洋横断で運ぶコストは、海底ケーブルなら1円未満。衛星通信では数百円規模になる。世界のデータトラフィックが年率25〜30%で増加している現状では、この差は年々広がっていく。
## 衛星が担う役割——「代替」ではなく「補完」
誤解を避けるために明記しておくと、衛星通信は不要な技術ではない。海底ケーブルを敷けない島嶼部、山岳地帯、砂漠、紛争地域では、衛星が唯一の接続手段になる。コンテナ船の航行中の通信、紛争地での緊急回線、極地の研究基地——こうした場所でのStarlinkの活躍は疑いようがない。
問題は「大陸間の基幹通信」という土俵での話だ。この舞台では容量・遅延・コストのすべてで海底ケーブルが圧倒する。2024年以降も日米間、欧米間、アジア域内で複数の新規ケーブルプロジェクトが進行中であることが、その証拠だ。衛星の普及がインターネット需要全体を底上げすれば、海底ケーブルへの依存度はむしろ高まる。「海底ケーブルか、衛星か」という問いの立て方自体が、現実に即していない。
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よくある質問
- なぜ衛星通信ではなく海底ケーブルが使われるの?
- 海底ケーブル1本の容量は360Tbpsに達し、Starlink全衛星の総帯域(推定30〜80Tbps)を大きく上回ります。遅延も光ファイバーの方が低く、1GBあたりのコストは衛星通信の数百分の1です。
- 海底ケーブルがなくなったらどうなる?
- 世界のインターネットトラフィックの99%以上が海底ケーブル経由のため、主要ケーブルが同時に損傷すれば国際通信は事実上停止します。金融取引、クラウドサービス、国際電話すべてに影響が及びます。
- 海底ケーブルはなぜ必要なのですか?
- 大容量、安定した低遅延、長期コスト効率で衛星通信を大きく上回るためです。国際通信の主力インフラとして不可欠です。
- 衛星通信があるのに海底ケーブルは不要になりませんか?
- 不要にはなりません。衛星は補完には有効ですが、大容量の国際トラフィックを低遅延かつ安価に運ぶ主役は今も海底ケーブルです。
出典
- TeleGeography: 海底ケーブルと衛星通信の比較