ドローンがAWSを停止、太平洋で進む海底ケーブル争奪戦
まず読む基礎解説
2026年3月23日、中東バーレーンのAWSリージョンがドローン活動によって機能停止した。世界の国際通信の99%を担う海底ケーブルを含む通信インフラが、物理的破壊という新たな脅威にさらされていることが改めて示された。奇しくも同日、太平洋ではマーシャル諸島共和国が米国支援を受けた新たな海底ケーブル計画を発表。地球規模の情報インフラをめぐる地政学的攻防は、新たな局面に入った。
## バーレーンAWS停止、ドローンが突いた「物理的脆弱性」
Amazonの広報担当者はロイター通信の報道を受け、「バーレーンのAWSリージョンがドローン活動によって中断した」と認めた。直接攻撃か近隣への余波かは明かされなかったが、安価なドローンが世界規模のクラウドサービスを止めたという事実は重い。
データセンターやインターネット交換拠点(IX)、そして海底ケーブルの陸揚げ局——これらの物理インフラは、これまでサイバー攻撃の文脈で語られることが多かった。しかし沿岸部に設置される陸揚げ局は、ドローンや小型船舶による物理的な攻撃に対して無防備に近い。国際通信の99%を支える海底ケーブルも例外ではない。
## 「IOKWE」ケーブルとGoogleの「Halaihai」、太平洋を繋ぐ新動脈
マーシャル諸島共和国の国営通信公社(NTA)が発表した「IOKWE」ケーブルは、「Pacific Connect」イニシアチブの一環だ。マーシャル語で「こんにちは」「愛」「虹」を意味するこの名のケーブルは、Googleが主導する「Halaihai」ケーブルシステムへの直接接続により、大容量の国際回線を確保する。
プロジェクトには米国政府の資金援助と、米国貿易開発庁(USTDA)が拠出した実現可能性調査費用が充てられている。インフラ支援の名の下に、米国の地政学的な意図が透ける構図だ。
## 太平洋島嶼国が抱える「1本依存」の危うさ
太平洋に点在する島嶼国の多くは、1本の海底ケーブルに国の通信網全体を依存している。自然災害や船のアンカーによる事故でそのケーブルが切断されれば、経済活動・医療・行政が同時に止まる。マーシャル諸島も例外でなく、IOKWEケーブルの敷設は単なる高速化ではなく、通信ルートの冗長化——「1点障害によるブラックアウトを防ぐ」ことが最大の目的だ。
この発想は、バーレーンでのAWS停止が改めて教えてくれた教訓と重なる。
## 中国の海洋進出を牽制する米国の「ケーブル外交」
Pacific Connectは純粋なインフラ投資ではない。2010年代以降、中国系企業が関与する海底ケーブルが太平洋・インド洋・アフリカ沿岸に急拡大し、米国は安全保障上の懸念を強めてきた。2023年に開通したパラオ向けの米国支援ケーブル「ECHO」、同年の米日豪によるパプアニューギニア向けケーブル延伸など、太平洋での米国主導案件は相次いでいる。IOKWEはその戦略の一手だ。
## 直径数センチの光ファイバーが担う安全保障の現実
デジタル社会の基盤が、海底に敷かれた直径数センチの光ファイバーの束に支えられているという事実を、多くの人は意識しない。しかし国家はその現実に鋭敏だ。ドローンによる物理破壊、国家関与の破壊工作、そして支配権をめぐる外交——海底ケーブルをめぐるリスクは多層化している。
今後の通信インフラ防衛に求められるのは、サイバーセキュリティ単体ではなく、物理防護・ルート冗長化・外交の三位一体の戦略だ。バーレーンのドローン停止から太平洋の新ケーブルまで、2026年3月23日という1日の出来事が、その複雑な現実を凝縮して見せた。
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よくある質問
- なぜ海底ケーブルは地政学リスクの影響を受けるのですか?
- 世界の国際通信の99%を担うため、特定の国家や勢力が情報を盗聴したり通信を遮断したりする標的になりやすいからです。また、ケーブルの陸揚げ局が紛争地域にあると、ドローン攻撃など物理的な損傷リスクも高まります。
- Pacific Connectイニシアチブとは何ですか?
- 米国やオーストラリアなどが支援し、太平洋島嶼国のデジタルインフラを強化する構想です。新たな海底ケーブルを敷設することで、島嶼国の経済発展を促し、地域の安定と安全保障に貢献することを目的としています。
- 海底ケーブルが切断されたらどうなりますか?
- 多くの主要な通信ルートは複数の海底ケーブルで冗長化されているため、1本が切れても直ちに通信が途絶することはありません。しかし、代替ルートがない地域や複数のケーブルが同時に損傷した場合は、大規模な通信障害が発生する可能性があります。
出典
- SubTel Forum: Amazon said on Monday its Amazon Web Services region in Bahrain has been “disrupted” amid the current conflict in the Middle East...
- SubTel Forum: The National Telecommunications Authority (NTA) of the Republic of the Marshall Islands (RMI) proudly announces a landmark agreement to enhance the nation’s digital connectivity and resilience by joining the Pacific Connect initiative.
- SubTel Forum: The “IOKWE” Cable System — In Marshallese, “Iokwe” holds different meanings; “hello — a warm greeting, love — an expression of care, and rainbow — you are beautiful as one.”