海底ケーブル企業の全体像:製造4社とGAFA投資の実態

海底ケーブル企業の全体像:製造4社とGAFA投資の実態
4社だけが世界の海底ケーブル製造を担っている。アメリカのSubCom、日本のNEC、フランスのAlcatel Submarine Networks(ASN)、そして中国のHMN Technologies——この4社で、インターネットトラフィックの約99%を運ぶ海底ケーブルのほぼすべてが作られる。巨大市場でありながら、製造という工程を握るのがこれだけ少数の企業であることは、この産業の特異性を端的に示している。 ## 製造4社が作り上げた参入障壁 海底ケーブルは光ファイバーを金属管で覆い、さらに保護層を重ねた特殊構造を持つ。深海では水圧8,000メートル相当に耐える設計が要求され、製造施設の建設コストだけで数百億円に上る。自然に、プレイヤーはごく少数に絞られてきた。 中でもアメリカのSubComは最大手で、大西洋横断・太平洋横断ケーブルの多くを受注する。日本のNECは世界シェア約35%を誇り、太平洋・アジア方面のルートで存在感が際立つ。NECが携わったSJC2(South-East Asia Japan Cable 2)は2022年に開通し、日本とシンガポールを結ぶ主要幹線の一つとなった。 フランスのASNはNokia傘下にある。アフリカ大陸を周回する「2Africa」は全長4万5,000キロメートルに達する大型プロジェクトで、ASNが受注した。10億人以上のアフリカ大陸のインターネット基盤に直結する規模だ。 4社目の中国・HMN Technologies(旧Huawei Marine)は、米国の制裁措置によって西側諸国からの受注が激減した。現在は中東・アジア・アフリカの非西側ルートが主戦場となっている。 ## テック大手が通信会社を抜いた投資競争 2010年代まで、海底ケーブルへの資金を出すのは国際通信会社のコンソーシアムが主体だった。その構図はいまや一変している。 Googleは太平洋横断の「Topaz」「Proa」「Taihei」、アフリカ西岸の「Equiano」など、自社名義のケーブルを次々と建設する。Equianoはポルトガルからナイジェリア、南アフリカを結ぶ全長1万5,000キロメートルの専用ケーブルで、2023年に完成した。自前の通信インフラを持てば、クラウドサービスのレイテンシ改善とコスト削減が同時に実現する。 MetaはGoogleとともに2Africaに出資し、太平洋ルートの「Candle」にも名を連ねる。Microsoftは北大西洋の「Amitié」や「MARE」に参画し、AmazonはAWSのインフラ拡充を目的にインド洋・太平洋地域でのケーブル投資を加速させている。4社それぞれが異なるルートで自前の帯域を確保しようとしている構図だ。 ## NEC・NTT・KDDI・SoftBank——日本企業の役割分担 日本企業の関与は製造だけにとどまらない。 NECは製造と敷設の両方をこなす。KDDIはKCS(KDDI Cable Ship)という保守専業の船舶部門を持ち、アジア域内のケーブル障害対応で実績を積む。SoftBankはADC(Asia Direct Cable)、SJC2、Candleなど複数のプロジェクトに出資し、アジア太平洋の帯域確保を進める。NTTグループはNTT World Engineering Marineを通じて敷設船を自前で保有し、JUNOなど太平洋横断ケーブルへの投資を続けている。 国内3大キャリアが揃って海底ケーブル戦略を持つ背景には、日本が島国でありながらデータセンターの集積地であるという地理的特性がある。 ## 「作る会社」と「敷く会社」は分業する 製造メーカーが敷設まで担うケースも多いが、敷設・保守を専業とする会社も存在する。 英国のGlobal Marine Groupは世界最大の海底ケーブル敷設・保守会社で、特定のメーカーに依存せず複数案件を請け負う。フランスのOrange Marine(Orangeグループ傘下)は欧州からアフリカへのルートで多くの実績を持つ。SoftBankグループのSBSS(SB Submarine Systems)も保守事業を展開している。 敷設船1隻の建造コストは数百億円規模。海底ケーブルは年間数十件の障害が発生することを前提に設計されており、修理船が常時スタンバイしている。 ## 地政学が決める、次の10年の産業地図 SubCom、NEC、ASNの3社は需要過多の状態にある。建造スロットは数年先まで埋まり、新規プロジェクトの調達コストが上昇傾向にある。HMN Technologiesが西側市場から事実上排除された結果、残る3社への発注が集中しているためだ。 この状況は単純な競争の帰結ではなく、米国が主導する通信インフラの安全保障政策の産物でもある。製造の寡占はより強まり、敷設・保守の分野では新興プレイヤーが入り込む余地が生まれている。海底ケーブル産業の次の10〜20年は、地政学と技術の両方によって塗り替えられていく。

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