Starlink vs 海底ケーブル — 衛星通信と光ファイバー、どっちが勝つのか
基礎から押さえる
「Starlink があれば海底ケーブルは要らなくなるのでは?」——この質問はここ数年で最もよく聞かれるものの一つだ。答えを先に言うと:ならない。理由を説明しよう。
容量の圧倒的な差
これが決定的な違いだ。Starlink の衛星 1 基の通信容量は約 20Gbps。現在軌道上にある約 6,000 基を合計しても約 120Tbps。一方、海底ケーブル 1 本の容量は JUNO だけで 360Tbps。たった 1 本で Starlink 全体の 3 倍。
世界の海底ケーブル総容量は約 3,800Tbps で、Starlink の 30 倍以上。そしてこの差は今後さらに広がる。海底ケーブルはマルチコアファイバーなどの新技術で容量を桁違いに増やせるが、衛星は電波の周波数帯という物理的制約がある。
遅延(レイテンシ)
Starlink の低軌道衛星(高度 550km)は、従来の静止軌道衛星(36,000km)より遅延が劇的に小さい。Starlink の遅延は約 20〜40ms で、海底ケーブルの太平洋横断(約 60ms)と比べても悪くない。
ただし、衛星間のホップ(レーザーリンクで衛星を中継する)が増えると遅延は積み上がる。また、Starlink は天候の影響を受けやすく、豪雨時には遅延が 100ms を超えることもある。海底ケーブルは天候に左右されない安定性が強みだ。
コスト効率
海底ケーブルの 1Tbps あたりのコストは年々下がっており、現在は衛星通信の 1/100 以下とされている。Starlink は衛星 1 基の打ち上げ・製造コストが約 50 万ドル、寿命は 5〜7 年。6,000 基の維持には年間数十億ドルが必要だ。一方、海底ケーブルは 1 本 3〜5 億ドルで 25 年間使える。帯域幅あたりのコスト効率では海底ケーブルが圧勝だ。
Starlink が勝つ場面
では Starlink に価値がないかというと、全くそうではない。海底ケーブルが届かない場所——離島、山間部、発展途上国の農村部、航空機内、船上——では Starlink は革命的なサービスだ。
トンガの海底火山噴火で唯一のケーブルが切断された際、衛星通信が命綱になった。紅海でのケーブル損傷時にも、衛星回線がバックアップとして機能した。海底ケーブルの冗長性を補完する存在として、衛星通信の価値は計り知れない。
共存の時代へ
結論として、Starlink と海底ケーブルは競合ではなく 補完関係 にある。海底ケーブルが「高速道路」なら、Starlink は「ヘリコプター」。大量の物資を運ぶなら高速道路が圧倒的に効率的だが、高速道路がない場所に届けるならヘリの出番だ。
世界の通信インフラは、海底ケーブルが大動脈、衛星通信がラストマイルという役割分担で進化していく。どちらか一方では、80 億人のインターネット接続は成り立たない。
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出典
- TeleGeography: 衛星通信と海底ケーブルの比較分析