サメが海底ケーブルを噛む?Googleがケブラー装甲を採用した理由と被害の実態
まず読む基礎解説
「サメが海底ケーブルを噛んでインターネットが止まる」——嘘みたいな話だが、これは実際に起きている。2014 年に YouTube で拡散された映像には、深海でケーブルに噛みつくサメの姿がはっきりと映っていた。Google のインフラ責任者が「我々のケーブルはサメに噛まれることを前提に設計している」と公言したことで、この話題は世界中のメディアに取り上げられた。
なぜサメはケーブルを噛むのか
サメの頭部には 「ロレンチーニ瓶」(ampullae of Lorenzini)と呼ばれる電気受容器官がある。ゼリー状の物質が詰まった小さな穴が頭部に数百個あり、獲物の筋肉が発する微弱な電場(数百万分の 1 ボルト)を感知できる。暗闇の海底でも、砂に隠れた獲物の心臓の鼓動を「電気的に」捉えて狩りをする仕組みだ。
海底ケーブルには中継器への給電のために最大 15,000V の直流電流が流れている。この電流が生み出す電磁場をサメが「獲物の生体電場」と誤認し、噛みつくと考えられている。特に中継器付近では電場が強く、被害が集中する傾向がある。
噛みつくサメの種類も特定されている。主にクロトガリザメ、ヨシキリザメ、アオザメなどの外洋性種で、深海に潜む大型のサメが関与するケースが多い。
Google のケブラー対策
Google は自社の海底ケーブルに ケブラー(アラミド繊維)の保護層を追加している。ケブラーは防弾チョッキやレーシングカーの装甲にも使われる高強度繊維で、引張強度は鋼鉄の 5 倍。サメの歯による貫通を防ぎ、ケーブル内部の光ファイバーを保護する。
ケブラー層は通常の鋼線アーマーとは別に追加されるため、ケーブルの重量とコストが増加する。それでも Google がこの対策を採用しているのは、ケーブル修理のコスト(1 件あたり 100〜300 万ドル)と比較して、予防の方が安いという判断だ。
実際の被害規模は?
ここで冷静にデータを見る必要がある。国際ケーブル保護委員会(ICPC)の統計によると、サメによるケーブル障害は全体の 1% 未満だ。海底ケーブル障害の原因ランキングは:
- 漁業活動(底引き網・トロール): 約 40%
- 船舶のアンカー: 約 25%
- 自然災害(地震・海底地すべり): 約 15%
- 経年劣化: 約 10%
- その他(サメ含む): 約 10%
漁船のアンカーの方がサメよりはるかに大きな脅威だ。しかしメディアと SNS での拡散力は「サメ vs Google」が圧倒的で、海底ケーブル業界で最も有名なエピソードになっている。業界関係者は「サメの話のおかげで海底ケーブルの認知度が上がった」と苦笑するという。
他の海洋生物との遭遇
サメ以外にも、海底ケーブルは様々な海洋生物と「共存」している。
- クジラ: 大型クジラが深海に潜水する際にケーブルに絡まる事例が、過去には報告されている。現代のケーブルは細くて柔軟なため、このリスクは大幅に減少
- イカ・タコ: 深海のイカがケーブルに触手を絡ませる事例がある。直接的な損傷は稀だが、ROV カメラにはよく映る
- フジツボ・ホヤ: 浅海部でケーブル表面に大量に付着し、重量増加や腐食の原因になる。特に温暖な海域で問題
- 深海魚: ケーブルの微小な発熱に引き寄せられ、ケーブル付近に集まる傾向がある。「人工リーフ効果」として研究されている
海底ケーブルは人間が作った「海の最長の構造物」だ。それが海洋生態系の中に置かれている以上、生き物との遭遇は避けられない。サメの噛みつきはセンセーショナルだが、海底ケーブルと海洋生物の関係は、もっと複雑で興味深いものなのだ。
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出典
- WIRED: サメと海底ケーブルの関係についての分析